2026.04.04
口腔機能低下症(こうくうきのうていかしょう)とは、加齢や疾患、生活習慣などの影響によって、口の働き(噛む・飲み込む・話す・唾液を出すなど)が全体的に低下している状態を指します。日本では高齢化の進行に伴い注目されている概念で、放置すると栄養状態の悪化や誤嚥性肺炎、生活の質(QOL)の低下につながるため、早期発見と対応が重要です。
この状態は単なる「歯の問題」ではなく、口腔全体の機能の問題として捉えられます。例えば、噛む力(咀嚼機能)の低下、舌や唇の動きの低下、唾液分泌量の減少、飲み込み(嚥下)機能の低下などが複合的に関係します。その結果、食べ物が噛みにくい、むせやすい、滑舌が悪くなる、口が乾くといった症状が現れます。

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口腔機能低下症は、複数の項目を評価することで診断されます。主に以下のような検査が行われます。
歯垢や舌苔の付着状況を確認し、口の中の清潔度を評価します。
専用の機器や試験紙で唾液の量を測定し、乾燥の程度を確認します。
専用のセンサーや咬合紙を使い、どの程度の力で噛めるかを測ります。
「パ・タ・カ」などの音を一定時間でどれだけ速く発音できるかを測定し、舌や唇の動きを評価します。
舌で器具を押す力を測り、飲み込みや食塊形成に関わる機能を確認します。
ガムやグミなどを噛んでもらい、どの程度細かくできるかを評価します。
水を飲んでもらうテストなどで、むせや飲み込みの状態を確認します。
これらのうち複数項目で基準を下回ると、口腔機能低下症と診断されます。
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口腔機能低下症は、適切な対策によって改善・進行抑制が可能です。
歯磨きや舌清掃を丁寧に行い、口の中を清潔に保つことが基本です。定期的な歯科受診も重要です。
舌や唇、頬の筋肉を鍛える体操が有効です。例えば、
・「パ・タ・カ」の発音練習
・舌を上下左右に動かす運動
・頬を膨らませるトレーニング
などがあります。
柔らかいものばかりでなく、適度に噛み応えのある食品を取り入れることで、咀嚼機能の維持につながります。
ガムを噛む、水分をこまめに摂る、唾液腺マッサージを行うことで口の乾燥を防ぎます。
入れ歯が合っていない場合や歯が不足している場合は、適切な治療を行うことで機能改善が期待できます。
バランスの良い食事を摂ることで、筋力や全身状態を維持し、口腔機能の低下を防ぎます。
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口腔機能低下症は、加齢とともに誰にでも起こりうる身近な問題ですが、早期に気づいて対策を取ることで改善が可能です。特に「食べにくい」「むせる」「口が乾く」「話しにくい」といった変化は重要なサインです。歯科医院での定期的なチェックと日常的なトレーニングを組み合わせることで、健康寿命の延伸や生活の質の向上につながります。口の機能は全身の健康と密接に関係しているため、軽視せず総合的にケアしていくことが大切です。
検査は主に50歳以上の方を対象として行われることが多いですが、症状があれば年齢に関係なく評価することが可能です。
当院でも口腔機能低下症の検査を実施しており、患者様一人ひとりの状態に応じた評価を行っています。また、検査結果に基づいて、口腔機能の改善や維持を目的とした指導・トレーニングも積極的に行っています。具体的には、舌や口唇の体操、発音練習(パ・タ・カ体操)、咀嚼力を高めるための生活指導、唾液分泌を促す方法などを提案し、日常生活の中で無理なく取り組めるようサポートしています。
