2024.11.11
口腔乾燥症とは、唾液の分泌量の減少により口腔内が乾燥する状態です。
原因としては、唾液腺あるいは唾液腺導管の傷害、唾液腺の支配神経の傷害、シェーグレン症候群などの全身疾患による症状、服薬による副作用や情緒的な要因によると考えられます。
口腔乾燥を訴えるほとんどのケースでは、唾液腺自体への器質的な問題があることは少なく、舌などの口腔機能が低下することにより本来出るべき唾液量を出すことができていないという状況です。そのため、舌、頬、口唇などの顔面周囲筋肉の運動機能や咀嚼機能を含めた口腔機能への視点が重要です。
動物実験の例では、あまり噛まなくて良い食材を一週間与え続けると、唾液腺の機能や形態が変化し、唾液の分泌量が低下することがわかっています。そのため、日常的によく噛むことは唾液分泌を促進するうえで、極めて効果的と考えられます。咀嚼習慣としては、左右両側の歯で均等に噛むことが重要です。咀嚼回数の目安として、一口につき20回を推奨しています。また、食習慣も重要です。早食いやお茶などで流し込んで食べる習慣があれば、唾液分泌にとって望ましくないため改善が必要です。食習慣の改善を積み重ねることによって、唾液分泌を徐々に増やしていきます。
人は一日に1〜1.5リットルの唾液を分泌します。通常は食べ物を食べることによって、舌や口腔粘膜にある味細胞が刺激されたり、噛むことによって口の中が刺激されることで反射的に唾液が分泌されます。(=刺激的唾液)
たとえば、休息時など、刺激がない時でも唾液は少量分泌ずつ分泌されています。(=安静時唾液)
頬の膨らましができる高齢者では、安静時、刺激時ともに唾液の分泌量が多いことがわかりました。
唾液の分泌は、咀嚼習慣や食習慣の改善、舌や頬などの運動機能の向上を促すことが重要です。
早良区 小田部 いなば歯科クリニック 稲葉健一郎